私の好きな場所

人生を楽しく過ごすための模索と経験をアウトプットしてます。

記事内のリンクには広告が含まれています。

【仕組みヤバない?】元鳥取県知事の著書『知事の真贋』を読んで学んだこと【前提条件の大事さ】


ブログランキング・にほんブログ村へ

知事の真贋

見直すなら人より仕組み。しえるです。

政治について知らないことはたくさんあるので、気になる人や良さげな本を見つけたら読んで知ろうとしたりしているのですが、今回は行政分野でジェンダー平等全国1位の鳥取県庁の記事を見て知った、片山善博さんの本を読んでみています。

Kindle Unlimitedで本・マンガ・雑誌読み放題を30日間無料お試し*

nordot.app

「男性管理職に『女性に頼んだら、ちゃんとやってくれる』という当たり前のことを、実体験させる必要があった」
 こうした取り組みを重ねるにつれ、意欲の有無や仕事の出来は、性別ではなく個人差なのだということが徐々に浸透してきたという。

この記事によると、片山さんは1990年代から性別に依(よ)らない人員配置やペーパーレス化、徹夜や長時間労働の解消などに努めてきた方で、1999年からは鳥取県知事に就いてさらに育休取得など公私ともに男女共同参画を推し進めた方のよう。

今回は、この片山善博さんの『知事の真贋(しんがん)』がわかりやすくて面白かったので、読んで学んだことの一部をまとめてみました。

【仕組みヤバない?】元鳥取県知事の著書『知事の真贋』を読んで学んだこと【前提条件の大事さ】

組織法と作用法

この種の行政関係法には、組織法と作用法があり、一つの法律に両方の内容が盛り込まれていることが少なくありません。
地方自治法もそうです。組織法としては、市町村には首長と議会があり、その組織をどうするべきかが書かれています。 難しくいえば「行政機関の権限、所掌事務、構造」などです。作用法では、議会が条例を制定して税をどうするとか、住民に影響を及ぼす行為について定めます。

行政に関する法律には、「組織法」と「作用法」という2つの側面があるのだそうです。

組織法では、組織はどうあるべきか。作用法では、住民に影響が及ぶ具体的な内容について定められているそうです。

憲法に則ってつくられた組織が、憲法に則って治めていくためにそうあるのだろうというのが想像つきます。

コロナ禍で何が起こっていたのかわかりやすい解説でした

この基本的対処方針には、知事が緊急事態宣言下で行う自粛要請だけでなく、緊急事態宣言が出ていなくても自粛要請ができるという解釈が盛り込まれました。
その根拠とされたのは、特措法第二十四条九項でした。
少し専門的になりますが、極めて大きな問題なので、あえて詳しく説明します。
この条項はそもそも知事が住民や事業者に対して行う要請に関する規定ではありません。都道府県が対策本部を組織するための規定です。

この本には、コロナ禍で緊急事態宣言が出ていないのに自粛要請していたのは違法なことと書かれていて、どうしてそう言えるのかがわかりやすく端的に書かれていました。

新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)によって、政府は集団感染や経路不明の感染者が発生したときには対策本部を設置し、政府がどんな対策をするか「基本的対処方針」を定めるところから始まるそうです。

今回のCOVID-19で2020年3月28日に発表された基本的対処方針では、緊急事態宣言が出ていなくても自粛要請ができるという解釈が盛り込まれており、その根拠は特措法第24条9項とされていたが、その条項は対策本部の組織に関する規定(組織法)であり、住民や事業者への要請を規定したもの(作用法)ではないと言います。

都道府県の対策本部では、知事が本部長になり、副知事や教育長などいくつかの職にある人が加わります。しかし、県庁内の人だけでは陣容が手薄になってしまいます。そこで他の地方機関や、外部の人にも入ってもらうように要請できると、法律には書かれています。

まず第24条は、対策本部を組織する時に内部の人だけだと手薄なので外部の協力要請できるというのがそもそもの趣旨の組織法。

これが第二十四条の趣旨で、その九項では、「都道府県対策本部長(知事のことです)は、当該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、公私の団体又は個人に対し、その区域に係る新型インフルエンザ等対策の実施に関し必要な協力の要請をすることができる」とされています。
条文を前後の文脈から素直に読めば、都道府県の医師会や地元の大学の感染症の専門家などに加わってもらい、対策本部の体制を強化するための要請だとわかります。

そして24条の中の9項なので、迅速な対応が必要とされる場合に、外部の団体や個人に協力を求めることができるというように私にも読み取れます。

つまりは組織をつくるための作用法なので、緊急事態宣言が出てなくても自粛要請できるなんて話には無関係であり、根拠にはなってないと私も感じます。

さすがに仕組みに問題ありすぎない…?

逐条解説書とは、制定された法律について、条文ごとに詳しく意義や要件などを書き込んだ解説書です。
不審に思って探したところ、確かにありました。特措法が制定された翌年の二〇一三年刊行の『逐条解説 新型インフルエンザ等対策特別措置法』(中央法規出版)で、同書には第二十四条九項について 「緊急事態宣言前においても、学校、社会福祉施設等での文化祭等のイベントを延期することや施設の使用を極力制限することなど、 感染対策を実施すること等の協力を要請すること等を想定している」などと書いてあります。
おそらくこれに官僚や政治家が引っ張られてしまったのでしょう。

どうしてこんな解釈違いが起こったのか?
それはとある会話から、コンメンタール(逐条解説書)に原因がありそうだとわかります。

逐条(ちくじょう)解説書とは、制定された法律を条文ごとに解説したもので、政治家や法律専門の担当者が参考に使うことも多いようです。

執筆者は「新型インフルエンザ等対策研究会」とされていますが、政府の役人がよくやる手で、担当部署の裏組織です。
法律が制定されると、担当課が研究会などという架空の組織の名前を名乗り、条文ごとの解説を書きます。職員は割り振られたパートを分担して書くだけで、論文のような査読(専門家による審査)はありません。しかも、だいたいは制定から一年以上経過してから書かれるので、制定時の職員が異動してしまっていることもあります。 
意地悪い見方をすれば、政府の役人側にも下心があり、第二十四条九項で何でもできるとしておいたほうが便利だと、故意にああした解説を書いたのかもしれないですね。
一方、都道府県庁にも、 法制担当とか文書担当と呼ばれる法律の専門家がいて、新しい法律については法的な検討をしたうえで施策化しますが、そうした担当者が頼りにするのも逐条解説書です。
逐条解説書の中には当てにならない記述も紛れ込んでいて、決してうのみにしない方がいいのですが、一般には権威があると信じ込まれています。 

この逐条解説書がなんと、担当部署の職員が割り振られたパートを分担して書いているだけで、査読がなければ、制定時を知る職員が異動していたり、役人の心1つでどうとでもできてしまう危険さをはらんでいることもあって、どうやら正確さが担保されたものではなさそうで、なんとも怖いことが起きているようです。
多くが不確かな情報を基に行政に取り組んでいる状態なわけで、それじゃWikiだけ見てやるのと大差ないようなものなのでは…。

科学や医療は査読された論文を基に発展しているのに、これはあまりにな仕組みですね…。

実際の根拠となるべくは第45条

ところで、第二十四条九項に基づくとされる知事の要請は、単にこの条文に「必要があると認めるときは、……することができる」と書かれているだけなので、前提条件がありません。
本来の対策が書いてある第四十五条には、様々な前提条件があります。
まず、政府が緊急事態宣言を出さないことには、外出や営業の自粛要請はできません。
しかも、営業自粛要請ができる施設は、学校、社会福祉施設、興行場が例示されているほか、施行令で細かく決められています。
こうして並べて見ると、非常に大きな問題が見えてきます。

そもそも、本来の対策に関しては第45条に書かれているのだそうです。

政府のいうところでは、ウイルス対策で知事が行える要請には二種類あり、第一段階が第二十四条九項だというのです。 いつでも、誰に対してでも要請できます。ところが、本格的に緊急事態宣言をした後だと、第四十五条が根拠になるので、要請の対象が限られてしまいます。
こんなことがあり得るのでしょうか。宣言をしない方が、広く制限をかけられる。このような逆転が起きるなどということは、法の解釈を誤っている証拠です。

緊急事態宣言を出すと、本来の規定どおりで制限された範囲での要請となるのに対し、平時のほうが自由に私権制限の要請をかけられるというあべこべなことがことが起きており、第24条9項を根拠にするという前提条件がおかしいことが浮き彫りになっています。

前提条件の解釈違いに次いで派生していく別の解釈違い

実は、この店名公表も法の誤った解釈から起こった問題だと思います。
特措法第四十五条に「公表」の規定はあるのですが、必ずしも店名を公表する定めではなかったのです。ところが、違法解釈による店名公表が相次ぎ、「自粛警察」と呼ばれる人々が店に押しかけるなどして騒動になりました。

指示に従わない事業者の店名公表もまた、誤った解釈から発生していると言います。

しかし、これまで述べてきたように、第二十四条は自粛要請を定めた条項ではなく、事業者に要請する場合は、第四十五条に基づかなければなりません。しかも、同条の定める「公表」は違った形の公表を定める規定でした。
特措法第四十五条によると、非常事態宣言が出された時は、知事が営業自粛などの要請ができるとされています。これは既に述べた通りです。その場合、正当な理由がないのに応じなければ、指示することができます。これらの要請や指示をした時には、「遅滞なく、その旨を公表しなければならない」と定められています。
ここでいう「公表」とは、私権の制限に当たる要請や指示をしたのであれば、こっそりやらないで、内容を直ちに公表しなさいという意味です。知事が要請や指示をしたことで、人権侵害となっていないかどうかをチェックするという観点も含めて、知事自身への情報公開を迫る規定です。

まず先ほどと同じで第24条9項に基づいて自粛を要請するのは誤りであり、そして「公表」というのは要請をされた側の話ではなく、要請内容に問題がないかが明らかであるよう「要請する側」に対しての話だと言います。
ちゃんと法に則ってこういう要請を出しましたよーという提示ですね。

特措法の第五条には「国民の自由と権利が尊重されるべきことに鑑み、新型インフルエンザ等対策を実施する場合において、国民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は当該新型インフルエンザ等対策を実施するため必要最小限のものでなければならない」と定められていて、私権を制限する場合にも基本的人権を尊重するよう求めています。
となれば、権力者である知事が第四十五条を使って度を越した私権制限を行っていないかどうか、われわれ国民はチェックする必要があります。
そのために「遅滞なく、その旨を公表しなければならない」として、知事に即座の公表すなわち情報公開を求めているのです。「その旨」とあるのは、要請や指示をした内容であって、必ずしも対象者の氏名を意味しません。
大阪府の吉村洋文知事は「私は公表しなければならないと義務づけられています。だからパチンコ店の名前を公表します」といっていましたが、公表を義務づけられているのはパチンコ店の名前ではなく、知事が何をしたかでした。
それが全く逆の読み方になってしまい、今もまだ正されていません。
人権を守るため、知事に情報公開を義務づけた規定なのに、これを逆手に取ってパチンコ店にいうことを聞かせるツールに使っているのです。

先ほどの組織法と同様の話だと思いますが、日本の法律は憲法に則って基本的人権の尊重が掲げられており、権力者が越権行為を行わないようにという内容が慎重に盛り込まれています。

本来ならこういった違法な要請を正すための法律ですが、それでもこういうふうに真逆に解釈して、越権行為がまかり通ってしまっているのが現状のようです。

ところで、もし懲罰的に事業者名などを公表するのであれば、法律は別の書き方になります。
勧告をして、従わなければ公表できる、というのが標準的なスタイルです。この場合は「公表しなければならない」ではなく、「公表できる」です。
例えば、国土利用計画法には土地の値段を釣り上げて売るのはけしからんという思想があり、土地を売買する時には届け出を求めます。 地価高騰の引き金になりかねない案件があれば、行政の側から「ちょっと待ってくれ。それはちょっとやめたほうがいいんじゃないか」という投げかけをします。 
にもかかわらず取引する場合には、「しないように」と勧告します。 それでも言うことを聞かないなら、事業者名などを公表することができるとされています。
特措法は、全体に私権の制限は必要最小限でなければならないという大原則を貫いているので、つるし上げのような行為に及ばないよう留意した規定になっています。
つまり、いうことを聞いてもらえないなら仕方がない、という立て付けなのです。 事業者が要請や指示に従わなかったからといって、それ以上の措置はとれないのです。

もし本当に情報を公表できる場合には、「しなければならない」というような義務表現ではなく、あくまで「できる」という最終手段としての許可に留まるそうです。

前提条件の確認は大事

多くの物事には前提条件というものがあります。

このソフトはこのOSで動くよとか、医師や車の免許などのようにこの資格がないとできないよとか、この容量分しか使えないよとか、抗生物質は細菌を殺すための薬だよとか、そういった条件ですね。
プレステ専用のソフトはSwitchで遊べないし、医師免許持たずに医療行為すれば医師法違反で罰されるし、手元に牛乳が1リットルしかなければ2リットルを注ぐことはできません。
それでもプレステ専用のソフトをSwitchで遊ぼうとしてたら対応機種確認しろよって話になるし、iPhone8のケースを買ってiPhone15が入らないと言っていれば、そりゃそうだという話です。

でもこの前提条件が合ってないまま話を進めようとする場面というのは、意外と多く発生しているような気がします。

たとえば以前から、言葉というものは1つの意味ではなく、いろんな側面があるから解釈が分かれるもので、今この場でこの言葉は何を指しているか定義という確認は常に必要であり、そこがズレたままだと話は一向にかみ合わないという内容の話を何度か書いてきていますが、これは大切な1つの前提条件の話だと思います。

ciel-myworld.hatenablog.com

よくSNSとか巷でも前提条件が違うことで、そもそもが条件に見合ってないトンチンカンなことを言い出して、議論がスタート地点にすら立てておらずに話がかみ合わないことってありますが、そもそもの根拠とする条文、その場において言葉が何を指すかという定義や条件を無視すれば、いくらでも変な方向に拡大解釈できてしまう話で、それが政治でも行われていて、そしてそれを指摘できるような専門家がその場にいないというのは怖い話です。

普段いろんなところで利用規約とかあったりしますが、ユーザーの責任・利用料金・禁止行為など項目がいろいろある中で、たとえば自分が利用していないサービスの条項を持ち出して補償などの話をされたら、それは自分に関係ない話だとなるはずですし、やってることはそういうことだと思います。

住民の行く末を左右するのが政治であり法律なのですから、それを扱う際は根拠や言葉の定義の確認が慎重に行なわれる仕組みになってほしいものですね。

Kindle Unlimitedで本・マンガ・雑誌読み放題を30日間無料お試し*

関連記事

ciel-myworld.hatenablog.com

ciel-myworld.hatenablog.com

ciel-myworld.hatenablog.com



ブログランキング・にほんブログ村へ