音楽の持つ力ってすごい。しえるです。
『SONGLAND』というオーディション番組をご存じでしょうか?
私の大好きな過去最高のオーディション番組で、この番組ほど音楽を生み出す仕事のすごさを間近で感じられる番組はありません。
録画を何回も見返しているのに、毎回気づけば涙が止まらないですし、イヤホンから音楽が流れてきただけでも泣けてきちゃいます。
※途中、オーディション結果のネタバレを含みますのでご注意ください。
製作の裏側を見られる貴重なオーディション番組『SONGLAND ヒットメーカーを探せ!』から生まれる音楽が涙なしでは聴けない件。
- 製作の裏側を見られる貴重なオーディション番組『SONGLAND ヒットメーカーを探せ!』から生まれる音楽が涙なしでは聴けない件。
『SONGLAND』とは?
『SONGLAND ヒットメーカーを探せ!』は、2019年5月にアメリカのNBCネットワークで放映された作曲家のオーディション番組です。
無名のソングライター4人がゲストアーティストに歌ってもらいたい自信作を持ち寄り、最終的に選ばれた1曲はアーティストの新曲として配信されます。
(回によってはアーティストが歌ってくれるだけでなく、映画『ワイルドスピード』の主題歌となったり、ジープのCMソングという副賞付きの時も!)
マルーン5のアダム・レヴィーンや先日紹介した『The Voice』のプロデューサーが製作総指揮を務めていて、すでにシーズン2への継続が決まっているそうです。楽しみ!
今年の初めにWOWOWで放送され、現在も火曜深夜(水曜午前)に再放送されています。
普段見ることのできない、ヒット曲を作りあげていく過程を追体験できる『SONGLAND』は本当に貴重な存在です。
番組の流れ
毎回異なるゲストアーティストに対し、4人の無名ソングライターたちが曲を持ち寄ります。
ゲストアーティストには、ジョン・レジェンド、ジョナス・ブラザーズ、チャーリー・プース、レオナ・ルイスなど豪華なメンツが登場します。
Ka-Boom Cat: The Best Lyrics You've Never Heard, Vol. 3 - Songland 2019 (Mashup)
シェーン、エスター、ライアンという3人の一流プロデューサーたちとアーティストの前で作曲者自身が歌って披露し、曲を踏まえて意見を出し合い、世界中に愛される曲になる可能性を探ります。
一次審査を突破した3人には、1人ずつプロデューサーがついて全面協力し、ゲストアーティストに選んでもらえるようブラッシュアップしていきます。
Jonas Brothers’ "Greenlight" Journey to the Music Video - Songland 2020
ジョナス・ブラザーズの回は、ゴーストライターとして影の存在だったアベルに光が当たっていく様子にこちらまで嬉しくなりました。
審査員で強力な味方ともなる3人の一流プロデューサー
シェーン・マカナリー
サム・ハントやミッドランドの男性プロデューサー。
人気のカントリーミュージック作曲家で、毎年のようにグラミー賞の最優秀カントリー楽曲賞にノミネートされています。
エスター・ディーン
リアーナやニッキー・ミナージュ、デヴィッド・ゲッタらに楽曲を提供してきた女性シンガーソングライター。
いつも即興でビートを追加し、曲を一変させています。
ライアン・テダー
ワンリパブリックのボーカル兼プロデューサー。
ビヨンセ、アデル、アリアナ・グランデ、テイラー・スウィフト、ジョナス・ブラザーズと名だたるアーティストたちに楽曲提供しています。
『SONGLAND』の見どころ
ソングライターの持ち寄る曲がハイレベル
まずソングライターたちの持ってくる曲のレベルがものすごく高くて驚きました。
一人一人の人生が詰まっていて個性豊かで、どの曲にもキラメキを感じます。
ごくまれに、他の曲に比べてちょっと物足りないな?と感じて、予想どおりに落選をしていく方がいることもありますが、ほとんどの回が全曲粒ぞろいの大接戦です。
ソングライターという職業の理解が深まる
『SONGLAND』の参加者は素人目に見て、歌手として活躍しててもおかしくないと思わずにいられない人たちがゴロゴロいるわけですが、皆が目指しているのはソングライターというポジションです。
皆の歌唱力が高くて、日本の音楽特番を見た時につい「歌手ってなんだろう…」と思ってしまうくらいのレベルで、参加者が歌っているのを聴いているだけでもダウンロードしたくなり、なんで自分で歌わないんだ?と思うことも多々ありました。
でもアーティストに歌ってもらったり、曲のレベルが上がっていく様子を喜ぶ姿に、これが歌手ではなく作曲家ということなのかと感じます。
そしてアーティストが選ばれた曲を歌う姿を見ると、これが歌手の力かと理解するにいたります。
ほんとプロってすごいですね。
そんな中、一次審査で落とされるのに多い理由が「私には合わないから、あなたが自分で歌って」というもの。
トップアーティストたちは自分にどんな声域が合うか、何を歌いたいかがハッキリしています。
自分を理解しているからこそ、自身の魅力を活かして最前線に立っているわけですね。
だからこそ自分との調和性に敏感で、「とても素晴らしい楽曲。だけど歌うのは私じゃない方がいい。あなたが歌う方がピッタリ」となるのです。
たとえば、私はこのパリスの「ピティ・パーティー」がめちゃくちゃ大好きです。
しかし、こんなにハイレベルな楽曲でも勝ち残ることはできないのです。
最初、この曲が落とされた時は嘘だろ!?と思いました。
でもトッププロデューサー陣の力を借りて、ブラッシュアップされた3曲を聴いた時、そして最後の1曲が選ばれた時、すべてを納得することになるのです。
これはあくまでゲストアーティストの新曲を決めるオーディションなのだ、と。
作られた曲たちは作曲家の人生であり、プロデューサーとの試行錯誤によって、アーティストに寄り添い、アーティストの人生の一部だと思ってもらえるように作り変えられていきます。
元々の曲がアーティストより作曲者に近い場合、大幅な改変が必要となり、「これは私の曲ではない」と判断されるにいたるのです。
ソングライターが作るのは自分の歌ではなく、アーティストの歌です。
求められるのは、いい曲を作ることだけでなく、アーティストの意向に沿う曲を作ることができる存在なのだということがよくわかりました。
プロデューサーとアーティストによる即席セッションにワクワク
Donkey Poo Make You Run for Cover: The Best Lyrics You Never Heard, Vol. 2 - Songland 2019 (Mashup)
一次審査では、プロデューサーやアーティストらがその場でこうしたらもっと良くなるんじゃない?と楽器を替えたり、歌詞を変更したりと次々に案を出していきます。
1人が歌いだせば、1人はギターを手に取り、1人はピアノを弾き始め、さらっと即席セッションが始まり、皆が音を楽しみながら、より良い作品にしようとしていく姿に、こちらもワクワクします。
聴いたら一発でメロディを覚えて歌ったり、演奏したりできるのが当たり前の世界で、音楽のプロしかいない現場。
歌詞がストーリーとして成立しているか?
誰かの心を傷つける言葉を使っていないか?
曲に足りないものは何か?
逆に詰め込みすぎになっていないか?
どうアレンジしたらアーティストに合うか?
ゲストアーティストが歌う姿を想像しながら、歌詞やメロディーといった曲の可能性を多角的に分析し、短い時間で課題を見つけ、解決策を示すプロの業にただただ見惚れるばかりです。
そしてほとんどの参加者が嫌な顔せず、むしろ自分の曲を歌ってくれたり、修正してもらえることに感激し、感謝している姿が印象的です。
皆で真摯に大好きな音楽に没頭し、それぞれのストーリーが重なっていき、相乗効果が生まれていくのが素敵ですね。
個人的には、メッセージの伝え方について「できるだけ優しく語らなきゃダメなの。いろんな人がいることを忘れないで」という言葉が心に刺さりました。
プロデューサーとのタッグにより生まれる大胆な変化
一次審査を通過すると、作曲家の卵たちがトッププロデューサーと一緒に自分の曲を編曲するという貴重な経験が待っています。
プロデューサーは、アーティストが曲を聴いた時の反応や対話から求めるものを理解し、どうすればその方向に持っていけるかを試行錯誤しながら、次々と自身の持つ引き出しを開けていきます。
路線を定め、歌詞や曲の構成を整理し、原曲がブラッシュアップされていく中で、時には大胆なイメチェンにより別物に生まれ変わる時もあります。
歌詞、メロディー、キー、テンポ、ジャンル、言語、変わる部分は様々ですが、一次審査で原曲を聞いているからこそ、生まれ変わった曲の進化っぷりに毎回驚かされます。
ジョエルの「ヘイトラブ」もガラリと変わった曲の1つで、曲調の路線変更に抵抗を感じていたようですが、明らかに編曲後の方がキャッチーで、何度も聴きたくなる曲に生まれ変わっていました。
余談ですがアーティストが選ぶ曲は、予想どおりの結果になることも多いです。
紙一重なんですけど、たしかに1つ上に突き抜ける何かがあって「これだ!」感があるので、アーティストの選択に納得しちゃいます。
良すぎて選べない!ってハイレベルすぎる回もありますけどね。
毎回アーティストが「想像以上に選ぶのが難しい」となっているのが納得で、本当にアーティストに苦渋の選択をしいるくらいの大接戦なのが伝わってきます。
トップアーティストの内面を知ってファンになる
『SONGLAND』では、オーディションを受けるソングライターたちと同様に、アーティストやプロデューサー側も真剣であり、全員がアーティストの魅力を最大限に引き出すために全力で取り組む様子が窺えます。
そのためにはアーティストのルーツ、表現したいもの、得意とする声域といった魅力の源に焦点が当たるので、そんな魅力を知ったら好きにならずにはいられません。
これは歌手だけでなく、プロデューサー、作曲者の皆にも言えることですね。
ふだん聴く音楽も、よっぽど好きでないと、どのような人柄なのか?どのような思いで音楽活動をしているのか?までを知ることってほとんどないと思います。
名前、もしくは曲を聞いたことがあるだけだったり、もしくは存在すら知らなかったアーティストたちの良いところを一気に知ることができるのもまた素晴らしいです。
皆が苦労を知る者だからこそ温かいピュアな空間
参加者の多くはソングライターとして有名になることを目指しながらも、普段はアイスを売ったり、教会で働いたりしていて音楽を本業としておらず、これまで日の目を浴びずにいました。
披露される曲には、参加するソングライターそれぞれの人生経験が詰まっていて重みがあります。
そしてこの番組は審査する側が全員シンガーソングライターの一面を持ちます。
審査する側のアーティストやプロデューサーたちも苦労した時代があるからこそ、このチャンスの重要さを誰よりも理解しており、真摯に取り組む姿がまた印象的でした。
作曲家の卵たちが抱えている苦悩は、審査員側も乗り越えてきた共通の苦悩。
発表にあたって門前払いされた当時を思い涙するチャーリー・プースや、幼い頃にブーイングを受けた話に自分のトラウマを重ねるシェーンの姿に、挑戦しようとした者だけがわかる痛みや苦しみの分かち合い、お互いへのリスペクトを感じます。
私の好きな1コマがあって、審査員側のライアンがアーティスト側になる回があります。
一次審査の時点で完成度が高かった曲が、シェーンの手助けによってさらにパワーアップし、完璧な名曲に仕上がりました。
OneRepublic Is Up & Ryan Crushed It With 'Somebody To Love' | AXN Songland Highlight
曲を受けてライアンが「自分の声域にピッタリだ」と言って歌い上げるのを見て、作曲者本人も、手伝ったシェーンも感激するシーンが大好きです。
自分ごとのように「ライアン…」と泣きそうな顔で見つめるシェーンがたまりません。
音楽を通して会話し、心を通わせて相手を思いやり、時に感極まる時もあり、そんなピュアで繊細な皆さんだからこそ、リスナーの心に響く名曲を生み出すんだろうなぁと思っちゃいました。
製作の裏側に光が当たる時代
昔って花形以外は黒子に徹していましたが、今の時代、いろんな面で製作の裏側を知る機会が急速に増えていますよね。
最近のビルボードランキングでは「Hot 100 ソングライター & Hot 100 プロデューサー」が新設されており、ヒット曲を量産するソングライターにスポットを当てられるようになっているそうです。
日本でも『関ジャム 完全燃SHOW』でプロデューサー目線での話を聞けるのが面白かったりします。
ついアーティストという花形に目がいってしまいがちですが、裏側の仕事を知ることで、スキルのすごさやこれまでの苦労・努力がわかり、尊敬が生まれます。
そしてこういったオーディションによって、より多くの才能が輝くことになり、業界のポジションが高められ、無名もトップも世間に認められていく機会が生まれるという素晴らしい循環だと思います。
また、NiziUとかもまさにそうだと思いますが、こういう風に裏側を流して一緒に追体験することで、リスナーにとっても思い入れは深まり、より一層心に刻まれて愛さずにはいられなくなってしまいます。
人は知らないと相手を低く見積もり、好き勝手言ってしまいがちなので、このような世界がもっと広がるといいですね。
鳥肌の立ったイチ押し曲たち
Macklemore - Shadow(feat.IRO)
数万人も擁するライブで共演する姿は涙なしでは見られません。
OneRepublic - Somebody To Love
OneRepublic - Somebody To Love (Live from Red Rocks)
一次審査の時点でかなりハイレベルでしたが、シェーンと組んで練り上げられた楽曲は鳥肌モノでした。
何度でも「ライアン…」と見つめてしまうシェーンの顔は何度でも見ちゃいますし、イヤホンから流れてきただけで泣きそうになる曲の1つです。
Aloe Blacc - Getting Started
Getting Started (Hobbs & Shaw Soundtrack) Aloe Blacc ft. J.I.D
最初からこれで決まりだと感じるほど、パワーがありました。
自分の作った曲が、誰もが知る映画のテーマソングになるなんて信じられない経験ですね。
Aloe Blacc -Same Blood
ワイスピの主題歌は『Getting Started』で間違いないと思っていたのですが、シェーンが『Same Blood』の裏にあるストーリーの存在に気づいて引き出し、見事な進化を遂げたのもしびれました。
Leona Lewis - Solo Quiero(Somebody To Love)
Leona Lewis, Cali Y El Dandee, Juan Magán - Solo Quiero (Somebody To Love) (From Songland)
ライアンの大胆な提案によりバラードだった原曲は、コラボを意識したスペイン語のラップが加わり、まったく系統の違う陽気なラテン曲へと生まれ変わりました。
想像だにしなかったギャップにゾクゾクしました。
思わず体が乗ってしまいますし、MVでのレオナの自然で楽しそうな感じが大好きです。
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