学生時代は吹奏楽部でした。しえるです。
「青のオーケストラ」という漫画をご存じでしょうか?
私にとっては広告でチラッと見かけたことがあったくらいだったのですが、読んでみたところ大変熱量の高い素晴らしいオーケストラ漫画だったので紹介していきたいと思います。
個人的には「キングダム」以来の大ヒットです。
素晴らしい青春オーケストラ漫画に出会いました【青のオーケストラ】
「青のオーケストラ」は、WEBコミックサービス「マンガワン」や「裏サンデー」で阿久井真さんにより連載されている、学校のオーケストラ部をテーマとした漫画です。
千葉県立幕張総合高等学校のシンフォニックオーケストラ部への取材をもとに描かれており、とてもリアリティのある仕上がりになっています。
【完全版】『青のオーケストラ』スペシャル動画~定期演奏会編~
あらすじ
とある理由でヴァイオリンを弾くのを辞めた、元・天才少年、青野 一(あおのはじめ)。 将来の進路を漠然と考えていた中学3年の秋、一人の少女と高校のオーケストラ部と出会い、止まっていた彼の時間が動き出す—— 音と音、人と人が繋がっていく、アンサンブル青春ドラマ、開幕。
無料試し読み
とにかく漫画のクオリティが高い
音楽、青春、ライバル、成長、恋愛、家族、入部、引退、強豪校の群像劇など、正統派のさまざまな要素を楽しめる「青のオーケストラ」。
安定した整った絵に加えて魅せ方が本当に上手で、アンサンブル(合奏)が織り成す迫力や情景が見事に描かれており、ワクワク感にぐいぐい引き込まれていきます。
絵や構成で引っかかる部分もなく、ストレスなく純粋にストーリーを楽しむことができます。(私は音楽に触れてきているのですんなり受け入れた部分もあるかもしれませんが、そうではない方にもわかるよう説明も挟まれていたと思います)
似たような系統で言えばピアノ漫画の「のだめカンタービレ」があげられると思うのですが、こちらは主人公のだめの破天荒な天才肌色が強く、ドタバタ劇の要素が強い漫画だったと感じています。
それに対して「青のオーケストラ」は基本的に努力の上に成り立っているコツコツ派ばかりなので、とても共感しやすいです。
個人的には名作小説「蜜蜂と遠雷」と似たような感覚を受け、1巻からすぐに物語に引き込まれていきました。
登場人物の成長していく姿に心が躍る
1巻はバイオリンを辞めた主人公・青野一と、バイオリンを新たに始めた女子生徒・秋音律子の出会いから始まります。
それぞれの問題を抱えた2人がお互いを補い合いながら少しずつ歩み始め、やがて日本にやってきた天才バイオリニスト・佐伯を始めとした仲間たちとのオーケストラ部の話へと発展していきます。
自分の本当の気持ちの大切さが描かれていて、それぞれがどうしたいのか自分と向き合うところから始まり、ソロからオーケストラへ、初心者から経験者へ、導かれる側から導く側へ、登場人物のステージが変わって問題にぶつかるごとに殻を破って視野が広がっていく姿、成長と共に自分の意志で物事が展開していく姿に胸が熱くなります。
人間関係や心情描写がひとつひとつ丁寧に描かれ、何度涙腺が崩壊したことでしょう。
百数十人も擁するオーケストラ部の舞台でもまた、2人の天才の因縁、管楽器と弦楽器と打楽器、新入生と先輩、初心者と経験者、平部員とリーダーといった関係の対比や、去る側と去られる側とそれらを見守る側、辞めたい気持ちと続けたい気持ちという終わりと始まりの機微がたくさん詰まっていて、心が揺さぶられます。
私自身、吹奏楽部だったのでパート内や木管vs.金管、学年などでそれぞれにいざこざがあったことを思い出し、忘れていた記憶と重ねてしまいました。
目を見張るスピードで成長していく初心者仲間に向けて「快速列車」と例え「私たちは鈍行だよね」と言うのに対し、「快速なんかじゃないよ!むしろ自転車漕いで電車に追いつく?みたいな?」と返していて、わかりみが深すぎます。
豆知識:オーケストラと吹奏楽の違い
2者の違いは弦楽器があるかどうかの違いとなります。
弦楽器がいるのがオーケストラ、いないのが吹奏楽ですね。
その他の管楽器(木管+金管)+打楽器(パーカッション)という編成は両方とも同じになります。
私がやっていたのは吹奏楽だったので、「プルト」「表」「裏」などが聞き慣れず、新鮮で勉強になりました。
演奏曲を聴きながら読むと面白さ倍増
漫画の中でドヴォルザークの「新世界より」やビゼーの「カルメン」などが登場するのですが、私は曲が登場するたびにiTunesで探して流しながら読んでいました。
そうすると「ここの音が揃わなかったのかな?」とか「これがオーボエのソロね」「列車が来た!」「ここでティンパニが入ってきて激しめの展開に変わるんだ!」などと身を持って体感することができるのでオススメです。
曲の解釈に取り組む姿もすごく丁寧に描かれているので一緒に学べ、お陰でこちらも曲について深く知ることができて見方が変わりました。
技術はもちろん必要ですが、高みにのぼるほどそれ以外のものが必要となってきて、そういった部分が差となって表れるものですね。きっとトップレベルの方たちは作品を仕上げるために、海幕高校と同じように本音のぶつかり合いをされてきているのでしょう。
この漫画で得たものを踏まえて同じ曲を聴き比べると、演者によって全然別物に変わるのがよくわかります。
例えば作中に出てきた歌劇「サムソンとデリラ」のバッカナールであれば、数ある動画やサブスクの中でも次の動画が物語の愛憎劇という機微に触れていて、異彩を放っているように感じました。
Saint-Saëns: Danse Bacchanale · Dietrich Paredes · Orquesta Sinfónica Juvenil de Caracas
音楽って奥が深いですね。
最新刊情報
現在の最新刊は7巻となっています。
2020年9月11日ごろ、8巻が発売予定となっています。
今週のお題「読書感想文」