メジャーな梱包資材ですが。しえるです。
通販やフリマアプリなどで使う機会が増えた人もいるであろう、おなじみのダンボール。
引越しや仕事などダンボールを使う機会が身近にある方も多いかと思いますが、それでもダンボールの種類や仕様について考える機会というのは限られているものではないでしょうか。
今回はそんなダンボールについて、ちょっとマニアックめですが簡単な基礎知識を紹介してみようと思います。
メルカリなどにも使える?身近なダンボール箱の簡単な基礎知識【種類、仕様、各部の名称など】
ダンボールの構造について
基本的なダンボールはこのように、平らな2枚の古紙(ライナー)の間に波状の古紙(中芯)が挟まれた3層で成り立っています。
これらは表から順に「表ライナー」「中芯(なかしん)」「裏ライナー」と呼ばれています。
この断面が階段状に見えることから「階段のようなボール紙」ということで「段ボール」と名づけられたそうです。
古紙を使って作られ、9割がリサイクルされるダンボールはエコな包装資材といえます。
段ボールはリサイクルの優等生 | 全国段ボール工業組合連合会
ちなみに1枚の古紙(ライナー)と波状の古紙(中芯)を合わせた「片面ダンボール」と呼ばれる商品も存在します。
段の種類「フルート」
波形に成形された中芯(なかしん)の段のことは「フルート」と呼ばれています。
英語のfluteには楽器のフルート以外に、建築用語で柱などの「縦溝」や洋裁用語の「丸溝ひだ」などという意味もあり、ひだのついた襟(エリ)に似ていることから来ているのだとか。
フルートの種類はアルファベットで区分されていて、主に厚みで判断できます。
- Aフルート…約5mm 日本で1番よく使われている外箱。
- Bフルート…約3mm 日本で次点に流通している、小物の外箱や内箱。
- Cフルート…約4mm 世界的には主流の外箱。
- Eフルート…約1.5mm 厚紙と変わらない見た目、内箱やメール便など。
- Wフルート…約8mm AフルートとBフルートを重ねた5段で成り立つ。強度↑。
Eフルート以下にFフルート、Gフルートとさらに薄い厚みの種類も出ており、これらは「マイクロフルート」と呼ばれています。
JIS規格に定められているのはA~Cフルートまでなので、それ以外は会社によってばらつきがあったり、マイクロフルートはFからなど範囲に差が見られたりします。
また製造上で誤差は生じるものなので、それぞれ許容値(寸法精度)が定められています。
フルートは「AF」「B段」「C/F」などと表記されることも多いです。
段の厚みがあるほど内寸は伴って狭くなっていくので、送料に影響する外寸(がいすん:外側のサイズ)、荷物が入るかどうかに影響する内寸(ないすん:内側のサイズ)、どちらも留意する必要があります。
また、湿度によって紙が伸び縮みしたり、フルートの影響を受けたりなどで厚み以外に寸法自体にも誤差が認められているので、ギリギリのサイズを攻めてしまうと合わなくなる可能性があり、多少の余裕を持たせることも大事と言えますね。
予備知識として、通販などで届く荷姿のことを「外装箱」「外箱(そとばこ)」「カートン」、そして中に入った商品が入れられている箱を「内装箱」「内箱(うちばこ)」「個装箱」などと呼び、中でも印刷などで見た目よくしたものは「化粧箱」と呼ばれます。
この写真で言えば左上が外箱、右下が内箱ですね。
引越しや食材などの外箱にはよくAフルートが使われています。
よくあるメール便用の箱。
このように薄いGフルート(約0.9mm)になっています。
ちなみに材質は、アルファベットで表される「古紙などの含有率の違い」や数字で記される「重み」やその組み合わせ方によって変わるのですが、より専門的な話で、通販サイトには材質が書かれていないことも多いので、この記事では割愛します。
大まかには厚みや重み、段数などの数字が大きいほど丈夫になると捉えていれば、基本的にOKだと思います。
主な各部名称
ダンボールの寸法は「長さ×幅×深さ」で表します。
幅面から伸びる先に閉じるほうを「内フラップ」といい、長さ面から伸びる最後にフタをする部分を「外フラップ」と呼びます。
ダンボール業者で反対に書いているサイトもありますが、HTML化されたJIS規格票を見る限りはこちらが正しいはずです…。
ダンボールの寸法と配送に必要な3辺サイズは別物で、3辺サイズは「長さ+幅+深さ」と3辺の合計で求めます。
とはいえ、わざわざ計算しなくてもメジャー1つあれば簡単に3辺サイズは計測できます。
野菜などでも繊維の方向があるように、ダンボールにも「目方向(めほうこう)」というものがあります。
これはダンボールの裏(内側)のほうがフルートの接地面が浮き出ていてわかりやすいですが、波形が下に伸びて縞模様になっているのがわかるかと思います。
この縞模様の向きが実は大事で、ダンボールはこのタテの目方向であることで、上からの荷重に耐える力を発揮し、ダンボールの上に他の荷物を積むことが可能になります。
なので、この目方向を横向きにしてしまうと強度は1/3以下になってしまったという試験結果もあるとおり、荷重に弱くなってしまいます。
ですから「向きを変えた方が箱の大きさがちょうどいいから」などの考えで向きを変えて使用してしまうと、箱が潰れて中身に影響してしまうおそれがあるので、目方向には気をつけたいところです。
目方向 でどれだけ変わる?段ボールケースの圧縮強度 | 包装設計と物流改善のアイロップ株式会社
基本的なダンボールの形状の種類
A式(みかん箱)
ダンボールといえばこの形!というのが「A式」と呼ばれるもの。
みかん類の梱包によく使われることから「みかん箱」とも呼ばれています。
天面と底面にテープなどを貼って封をするタイプです。
折りたたむとこのような形に。側面が1か所糊付けされています。
A式ダンボールは100均で売られていたりもしますね。
このように底が簡単に折りたためるようになっている「ワンタッチ式」のものもあります。
B式
胴の部分を糊付けして筒状になった所にフタや底を差し込んでいく形のものを「B式」と呼びます。
テープいらずで簡単に組み立てられ、気軽に開けたり閉じたりできるのが特徴ですね。
ちなみにこの下の商品のように、底面を折りたたむことで強度を上げる組み底タイプは「地獄底(じごくぞこ)」「アメリカンロック」などと呼ばれます。
ワンタッチのように糊付けが必要ない分コストが安くなり、特に重量のある物などに使われたりします。
C式
身(身箱:みばこ)とフタに分かれているダンボールは「C式」と呼ばれます。
2つのパーツが必要なのでその分コストは上がります。
N式
糊付けか所のない1枚の紙でできた、フタを差し込む形式のものは「N式」と呼ばれています。
展開するとこのように1枚に広がり、折るだけで見た目よい箱が完成します。
たとう式(やっこ型)
平たいものを入れるのに適している「たとう式」は、天面1か所をテープなどで封して使います。
たとう式はシンプルな十字型で、風呂敷のようにフラップを折りたたんでいくものなのですが、なかなか実物を使う機会がないので写真を用意できませんでした。
「たとう」は多く折るから「多倒」と書くとする説明があったりしますが、着物などを包む「畳紙(たとうがみ)」と包み方が似ているので、「畳(たとう)」から来ている説のほうが納得できるなぁと感じています。
メール便用の箱はこのたとう式を使いやすく派生させた形という感じがしますね。
たとう式の箱がなかったのでメール便の箱で代用しますが、展開するとこのような形になります。たとう式だともっとシンプルな直線になりますね。
たとう式を広げた姿が折り紙のやっこに似ていることから「やっこ型」と呼ばれることも。
ちなみにやっこは江戸時代の「武家の中間(ちゅうげん)」のことのようですね。
コトバンクにあるデジタル大辞泉いわく「奴さん」は「折り紙で、奴一2の形に折るもの。」とあり、「奴」のページに飛ぶと一2は「江戸時代、武家の中間」とあるので、「江戸時代、武士に仕えて雑務に従事した者」を表しているようです。
いわゆる武家奉公人なので、なんで袴を履かせるのかは謎ですが…。