3月のライオンを最新刊まで一気読み。しえるです。
羽海野チカさんの漫画は、人間の可愛らしい側面やペットの愛情表現、おいしそうな食卓が多彩に描かれていて、読んでいるだけでこちらまでハッピーな気分になります。
それでいながら人間の心の裏側のストーリーもとても丁寧にひも解きながら紡がれており、胸を打ちます。
そんな羽海野チカさんがおくる「3月のライオン」が素晴らしすぎる名作なので紹介したいと思います。
【オススメ漫画】将棋×飯テロ×居場所を探す旅「3月のライオン」(羽海野チカ)
人間の温かさとおいしそうなごはんたちから伝わってくる生きる喜び
冒頭に書いた人や動物たちとのふれあいやおいしい食卓など、こちらまでハッピーな気分になれるような羽海野さんの生み出す<癒し>と<幸せ>の空気感がパンパンに詰まっています。
この世界観に触れると、あかりが何度でも零の面倒を見ていたように、羽海野さんも何度も根気強く、生きる喜びを伝えようとしてくれているのだと感じます。
川本家との出会いから始まる主人公・桐山零の変化
主人公の桐山零(れい)は幼い頃に家族と死別してしまいます。
プロ棋士だった父の将棋仲間であった幸田の内弟子となって居候することになりますが、義母や義姉弟と折り合いが悪く、やがて高校へ進学せずに中学生プロ棋士の道を選択し、独り立ちしていきます。
その1年後受験し直して高校に入りますが、人と話すことが苦手で友達はおらず、学校にも居場所がなく、孤独を抱えながら唯一のできることである将棋にガムシャラにしがみつく毎日を送っていました。
ある日、同僚の棋士からお酒の強要に遭い酔いつぶれてしまった桐山。
偶然通りがかった川本あかりに介抱してもらったことから、川本家との交流を持つように。
そんな川本家もまた父がおらず、母と祖母を亡くし、祖父とあかり・ひなた・モモの3姉妹で力を合わせて過ごしています。
川本家や担任の林田先生などとのふれあいから徐々に将棋仲間、部活仲間が増えていき、気づけば家族も友達もいなかった零のまわりにはたくさんの人があふれるようになります。
そして問題を1人で乗り越える必要がないことを知り、無表情で心を閉ざしていた零に笑顔や人のために動く姿が増えていきます。
人ってつい遠慮してしまうけど、実は頼ってくれるって嬉しいこともたくさんあるし、逆に隠される方がすれ違いが起こったり、心配をかけて余計な問題を生み出してしまったりしますね。
この零の心境の変化を喜ばずにはいられません。
たしかに自分を攻撃してくる人はいた。でもそうではない優しい世界もあるんだと教えてくれる羽海野さんの漫画は、人間の温かさに満ちた表現がとてつもなく秀逸です。
本気で川本家のごはんを一緒に食べたい
あかりさんが用意してくれるごはんが毎回とっても魅力的で、さらにめちゃくちゃおいしそうに食べるからたまりません。飯テロ度が半端じゃないです。
登場するペットたちの反応もまた可愛いんですよね。
このコマでもよだれ垂らして見つめる猫たちが愛らしいです。
ライバルの二階堂家にいるダックスフントのエリザベスが、ご主人の平和を守るために奮闘する回とかたまらなく好きです。
川本家は「三日月堂」という和菓子屋さんを営んでいます。
新しい商品づくりに勤しむのですが、それがまた毎回とても可愛くておいしそう!
特に私はこの「ふくふくダルマ」が食べたくて仕方ありません。笑
この川本家の朗らかに季節と食事を楽しむ姿に、いろいろある中でもささやかな幸せを見いだす喜びが伝わってきます。
もんじゃで有名な東京都中央区月島が舞台となっているのですが、東京だけどどこか田舎のような雰囲気の残る下町感がまた魅力的に描かれていますね。
(六月町の名前は羽海野さんが足立区出身なことから、足立区竹ノ塚の地名が由来なのでは?と推測してみたり…)
実はさっき、早朝から軽くお散歩に出かけたのですが、昼間とは違う静けさと心地よい風、イヤホンから流れてくる大橋トリオの歌声が合わさって、ただただ幸せだなぁ~と感じました。
たったこれだけのことでも人間って幸せを感じられるんですね。
将棋を知らなくてもワクワクする対戦
正直、私は将棋のルールがまったくわかりません。
やってみて考えるタイプで考えて動くのは苦手なので、覚える気もありません。笑
でもなんとなく対戦のワクワク感は伝わってきます。
個人的には「穴熊対決」のお互い引きこもって長期戦する様子が、シミュレーションゲームのようなイラストで表現されていてわかりやすくて、ニヤニヤしてしまいます。
本気で生きることの苦しみと乗り越える瞬間にある人間の底力
将棋というのはなかなか残酷な競技で、自分から「負けました」と言わないと勝負が終わらない世界。
明らかな敗戦に向けて駒を進めることもあれば、もうダメだと思った先に、実は逆転の一手が隠されていたりすることもある。
現実の世界も同じですよね。
10,000回失敗しても、10,001回目に成功するかもしれない。
諦めないということの難しさ。
いつどこにたどり着くかわからないけど、それでも深く潜れば潜っただけ、経験を得て大きく厚くなっていくのは間違いないんじゃないかと思います。
楽してよくなりたいという気持ちもよくわかります。
10代はそんなことしか考えていませんでした。
でも道なき道をいくことの意味がこの話に詰まっています。
心無い一言による問題が多発していますが、言われる側はきっとこんな思いを抱えているのでしょう。言い返さないから何も思ってない…そんなわけないですね。
他人のことはよく見えるし、簡単にこなしているように見えるし、粗も気になってしまう。
けど、相手も自分と同じ人間であり、1つずつ地道に取り組んでこなしているだけなんですよね。
プレッシャーの重みの表現が痛いほど伝わってきます。
しかし時にそれが守ってくれることもあると。すべては表裏一体ですね。
いじめ問題に巻き込まれてしまったひな。
「怖い」と恐怖に震えながらも、立ち向かったことは間違いじゃないと言い切る姿に、零同様に勇気をもらい、救われます。
たとえ何があっても「私が私の人生を棒にふる理由はひとつも無い」ですよね。
個人的には、これまで「れいくん」呼びだったひなが、いつの間にか「れいちゃん」と呼ぶようになっているのがグッときます。
自分の居場所を求めて…
「どこに行けばいいのかがわからない」って気持ち、抱えている人は多いと思います。
壁がとっても大きく感じるし、答えが出るのは怖いものです。私もそうでした。
でも動いてみると、壁の大きさや壁との距離感、やることが少しずつ見えてきます。
やりたいことができた時、自分から進んでする努力っていくらでも没頭できてしまいます。
たとえ結果が報われていなくても、成功する保証がどこにもなくても。
でもいくらでも没頭できるものだからこそ、もうダメだと思った先の何かしらにたどり着く可能性がぐんと上がるわけですよね。
そう思っていても生活が…周りの目が…いろいろ考えてしまいますよね。
自分が没頭できる何かに出会えた時に挑戦しやすい世の中になるといいなぁ…
やっぱりベーシックインカムって魅力的だなぁ…とつい思いを馳せてしまったり。
「3月のライオン」は将棋という題材の漫画でありながら、若くして家族も家もなくし、友達も頼れる人もいなかった桐山零が居場所を求めて奮闘する物語でもあります。
棋士として何手も先を読んで行動できる桐山ですら、何度も失敗し、迷いながらも自分にできることを握りしめて進むわけです。
この「そのおにぎりは絶対に手放すな」は最新刊の1コマなのですが、これまでの道のりを思うと、とてもとても大事な一言です。
自分が求めていることは何なのか?
それは得意とはまた分けて考えていかないとですね。
私もそこを間違わないように気をつけたいと思いました。
懐かしの面々も登場!
前作のハチクロメンバーが出てくるシーンもあって、テンションが上がります!
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おまけ:鳩森八幡神社(東京都新宿区)
日本将棋連盟の本拠地である将棋会館は東京の千駄ヶ谷にあります。
すぐそばには鳩森八幡神社があり、作中にも登場します。
この神社は、鳩みくじが可愛いんです。
1986年には日本将棋連盟の元会長により将棋堂が建てられ、120cmの王将駒が奉納されています。
この将棋堂の屋根の飾りは、将棋盤の脚と同様にクチナシの実がかたどられています。
なんでも対局中に他人が口を出すなという「口出しなし」から転じているのだとか。
富士塚から眺めてみました。
豪華キャストの実写映画版
神木隆之介くんが主演で実写映画化もしています。
宗谷名人が加瀬亮、島田さんが佐々木蔵之介、後藤さんが伊藤英明、林田先生が高橋一生、スミスは三角となって中村倫也が演じるなど、かなり豪華なキャスト。
まだ前編しか見ていないのですが、個人的には川本家の温かさをもっと表現してほしいなという感覚です。
ぼくのりりっくのぼうよみ - 「Be Noble」ミュージックビデオ
前編の主題歌である「Be Noble」は大好きな曲の1つです。
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