最大のネタバレがミームなあのゲーム。しえるです。
私が小さい頃、ファミコンソフトの『ポートピア連続殺人事件』がなぜかお気に入りで、よく遊んでいました。
セーブができなかったのでだいたい最後までいかずに迷路で迷って終わって、序盤を繰り返しプレイしていた記憶が残っています。
そんな『ポートピア連続殺人事件』で最近、AI搭載した無料デモが体験できるということで、早速プレイしてみました。
不評で話題のAI搭載『ポートピア連続殺人事件』の無料デモをプレイしてみた感想【Steam】
『THE PORTOPIA SERIAL MURDER CASE』とは
まず『ポートピア連続殺人事件』は、1983年に当時のエニックス&ドラクエシリーズ生みの親である堀井雄二さんが手がけたPCゲームとしてリリースされた推理アドベンチャーです。
その『ポートピア連続殺人事件』を題材に、AI技術の学習・体験ができる「SQUARE ENIX AI Tech Preview(スクウェア・エニックスAIテックプレビュー)」として、2023年4月24日に無料デモ『THE PORTOPIA SERIAL MURDER CASE(ポートピアシリアルマーダーケース)』がSteamで配信開始されました。
私が遊んだファミコン版はコマンド選択式だったので知らなかったのですが、元々のPC版ではコマンド入力式で、「でんわ」「しらべろ」と命令を書き込んでいたのだそうです。
そして今回の『THE PORTOPIA SERIAL MURDER CASE』は、AIの進化した現代で原点回帰の試作となっていて、コマンド入力式は自由度が高い反面、適切なコマンドがわからず進められないという点をAIで補おうという試みのようです。
AIにはこのような技術があって、今回のソフトにはNLP・NLU・STTが使われているのだそうです。
今回のデモでは「NLU Visualizer」という機能で、ユーザーの入力に対し、AIがどう汲み取ったのかが見れるようになっていて、いくつかあるリアクションの選択肢の中でどれが1番可能性が高いかを考えた様子が伝わってきます。
本テックプレビューでは、自然言語生成(Natural Language Generation)による
雑談会話機能を有していましたが、AIの非倫理的な発言の可能性を考慮し、
NLG機能は削除された状態でリリースされています。
※今後の研究により、プレイヤーのみなさまが安心して楽しめる環境が整った際の提供を予定しております。
問題発言しちゃうかもしれないからということで、NLG機能はなくした状態でリリースしたとのことでした。
なので雑談はできず、事件解決に関係あることしか話せない仕様になっています。
あえてとは言え、操作性悪すぎるのがキツかった…
これを書いている現時点で、300件超のレビューで「★3/10 非常に不評」となっている『THE PORTOPIA SERIAL MURDER CASE』。
たとえば自然言語処理を踏まえてシナリオを加筆したり、現在のゲームのようなヒントを付け加えると、シナリオで遊びやすくなったのか、自然言語処理で遊びやすくなったのかわからなくなります。だからこそシナリオはオリジナルに可能な限り準拠した形にしています。そういった検証実験のためのテックプレビューとなります。
開発者のインタビューによると、「『コマンド入力式』が持つポテンシャルを、自然言語処理で引き出すことをコンセプトにしており、あえて遊びやすくするための調整は行っておりません」とのこと。
なのである程度の遊びにくさはあえてのもののようです。
ただ、今回遊んでみて思ったのは、あまりにゲームとしての操作性が悪すぎて、不満がより大きくなってしまうなと感じました。
- 冒頭、勝手に会話が進んでしまい、場面転換でログも残らないので何言ったのかをニューゲームでしか振り返れない。
- 捜査でわかった人名・地名・証拠品名のキーワード以外の情報がほとんど残らないので、自力でメモする必要がある。
- PC-6001mkII版以降はファンクションキーに行動が割り当てられていて、主要コマンド一覧が見られるようになっていたが、本作には主要コマンドリストはない。
- 手前左に人物画、中央にチャット欄、右側にキーワードリストが表示されていて、前面非表示も自由にできないため、現場捜査しようにも背景に何があるのかがわかりにくい。
右のCtrl「View Env」が背景表示だったようです。moti5さん、教えていただきありがとうございました! - 日本語と英語が選べるのですが、日本語の場合は変換表記によって反応が左右するにもかかわらず、変換の候補が上側に出て打っている文字が隠れてしまい、変換する字のハイライトもないから、どう変換されているかわからなくて困った。
特に後者2つはこのゲームの意図に対してのこの仕様だからこそ、非常にストレスを感じました。
これまでのポートピア連続殺人事件は絵と文章が別枠だったから、何をしようかもう少し考えやすかったけど、主要コマンド一覧もないのに絵という場所の様子も隠れているのはだいぶやりづらいです。
当時はこれが日常だった部分もあるのかもしれないですが、現代の便利なゲームに慣れてしまった今はキツイものがありますね。
あとこれを書くにあたって初代のPC-6001版や6001mkII版の動画や画像などを見ていて気付いたのですが、オリジナルに可能な限り準拠という話だったけど、序盤から結構違うんですね。私、洗濯屋とかパチンコとか知らない…。笑
PCゲームが最初だったことすら知らなかったくらいだったので、カセットテープでゲームしていたのも知らなくて、こちらもビックリしました。
肝心のAIとのやりとりについて
AIの点においては、先ほど事件解決に関係のない雑談ができないと書きましたが、そもそも事件に関係する指示でも次のような返答をされ、戸惑いがありました。
- 「死体発見時の状況を教えてください」「〇〇さんとはどんな関係ですか」「(凶器)に指紋は?」と事件捜査ならありえそうな質問をしても「何を尋ねているんです?」「いま訊くことですか?」「え?」と返される。
- 「(場所)に行く」と書こうとしたところ間違えて「(場所)に言う」と入力してしまったところ、「ちょっと(人名)のことを訊きたいのですが……。」となってしまい、地名には反応せず、一言も触れていない反応をされることがあった。
- 「ゆきこについて」のひらがなを認識してくれず、「ちょっと小宮のことを訊きたいのですが……。」と全然違う人について尋ね始める。
結局AIでも、適切なコマンドがわからず進められないのです。
プレイ時間の想定について、プレイ済みの人は1時間、未プレイの人は4時間ほどという話でしたが、今回プレイ経験のある私は、初回クリアするのに約2時間かかりました。
遠い記憶とはいえ序盤何をするかくらいは覚えていたものの、そもそもファミコン版はコマンドありきでしたから、どうすれば進めるのかに苦戦して、「ボス!ふざけないでください。」「ボス!聴き取りに集中してください。」「ちょっとよくわからないですね。」「うーん……。」と反応されまくってしまいました。
そのうち、どんな言葉に反応してくれるかはだいたいわかるようになってはくるのですが、それを摑むまでが大変ですね。
また、元々オリジナルのキャラたちがイカれた反応をしているのに加えて、どこまでがオリジナルに忠実かもわからなかったので、何が変で何が変じゃないのかが正直よくわからなかった部分もあります。元々会話にならない被疑者もいましたからねぇ…。苦笑
明らかにおかしいと思うものでは、このことが判明した後なのにその反応する?とまるでロールバックしたような感覚を覚えることは何度かありました。
先に紹介した「NLU Visualizer」を表示するためのPauseキーを押すのに、自分のPCだとどこにあるのかも知らなければ(右Shiftにあった)、Fnキーも押す必要があるというのが私はわからなかったので、初見では「NLU Visualizer」を使っていませんでした。
あとで使ってみたところ、「〇〇について」と入力したのに「〇〇を喚べ」が「〇〇について訊け」より優先される意味がわからないなぁってなりました。苦笑
「呼ぶ」が「喚ぶ」、「聞く」じゃなくて「訊く」などなんでマニアックなほうの漢字なのかも謎ですし、「聴く」だとわかってくれないくらいには融通が利かなかったりもします。
雑談以前に本筋の解答もままならないと感じるくらいには言葉を拾ってくれる幅が狭く、返答の球種も少ないといろいろ試したいという気にはなれないものですね。
私には実際どういう意味合いでの非倫理的な発言を危惧していたのかはわかりかねますが、ストリーマーの釈迦さんが配信中に、ChatGPTで「不特定対象のラブレターの文面」をお願いしたところ、倫理的に良くないと諭されて作ってもらえなかったくらいですし、結局はAIというシステムを使う人間の倫理観の問題なのではないかと思っています。
完全に無責任な他人の感想ですが、あくまで学習してなんぼな発展途上のAIが導き出した答えでしかないのですから、雑談ありのほうが面白かっただろうになぁと残念に感じてしまいます。
初見の人には難しそうだと思う点
ファミコン版をプレイしたことある私ですら、どうすればいいのかに迷うことが多かったので、初見だと何をすればいいのかもっとわからない気がします。
それに40年前のゲームですから今と感覚が全然違う部分もあって、若ければ若いほど、自力だけでは解くのが難しいゲームなんじゃないかなって感じました。
私は何か所か詰んで、ファミコンの攻略を覗いてしまったのですが、「あぁ~そんなこともやってたな」と思うこともあれば、ノーヒントでその発想はまず出てこないわというのもあって、ジェネレーションギャップがネックになったりしました。今見るとマジかよって思う部分もありますね。笑
せっかく初見なら、もっとAIの精度が上がってから楽しんでほしいなって気もしますし、ゲームとしてはファミコン版の方が何倍も面白いのではないかと思います。
入手情報数&捜査日数
クリアすると最後にスコアとして入手情報数と捜査日数が表示されます。
どういう計算かはわからないですけど、左上が日にちになっていて、日数が過ぎていく仕様になっているんですね。
私が1回目のクリアにかかった捜査日数が11.67日、入手情報数が118。
2回目の捜査日数は8.67日、入手情報数は122でした。
Steamの実績解除は入手情報数127個なのであと何が残っているんだろう…?というところです。