たまには時事ネタのニュースの話でも。しえるです。
先日、とある足立区議の発言が話題となっていました。
「こんなことはありえませんが、日本人が全部L(レズビアン)、全部G(ゲイ)となってしまったら、次の世代をになう人が生まれない」などと発言した。
その後「B(バイセクシュアル)とT(トランスジェンダー)は生まれつきだが、レズとゲイについては、もし足立区に完全に広がったら足立区民がなくなってしまう」
性の多様性を教育で取り上げることについては「普通に結婚をして、普通に子どもを産むことが、いかに人間にとって大切なことか」と話し、足立区教育長にLGBTについて取り上げることの是非を質問した。
また、自身が3人の子どもを育てていることに触れ「ああ、子どもを産んでよかったな」と述べ、「国会議員が子どもを最低3人は産んで欲しいと発言すると、女性蔑視だ、子どもを産むか産まないかは女性の権利なんだとめちゃくちゃに叩かれてしまった」と発言した。
というような内容。
批判を浴びたことに対し、謝罪する気はないとの姿勢に、私は気を引かれました。
白石氏は「当事者が不快と思っても別に良い」と反発し、発言の撤回や謝罪をする意思はないという。
白石氏は毎日新聞の取材に対し「だから何。(発言は)人によって受け取り方が違う。私だって共産党の意見を聞いても全部不快だ」などと話した。
うわぁー清々しい!!と思いました。
「不快に思っても構わない」と言い切るのいいなって。
ちなみに私は、全面的にこの方に賛同しているというわけではありません。
足立区の議員なんてどういう方かそもそもよく知らないですし、記事見ただけでも、LGは後天性のものと考えているけど、生まれつきの方もいるのでは?とか「ん?」と思う点もあります。
言い方もっとあるよなぁって引っかかる部分がなくはないです。
でも、LGBTがこの世に存在しているのと同じように、この区議が考えて発言していることも事実だからどうしようもありません。
白石区議が議論したいのはそこじゃない
この区議にとっての論点って多分「少子化」についてですよね。
だから私個人的な感想で言うと「男女のカップル成立や結婚、出産がしやすい環境づくりに勤しめばいいんじゃないかな」というのが率直なところ。
なのに騒がれる内容が全然違うところなので、本当にヘイトスピーチ的な意味で言葉を発しているのか?と疑問に思って、足立区議会HPで発言の動画を見てみました。
正直、ひととおり聞き流してみて、切り取られ方が悪いと感じました。
まずそもそもの議題はやはり「超少子高齢社会に対する対応について」です。
彼はかなりの危機感を持って周りに呼びかけ、切り込んでいるように感じます。
「出生率1.45という数字は、西暦3000年には日本人の絶滅を意味します。
現在の足立区の出生率は1.2あたり。
今の人口を維持するには本来、出生率2.08が必要です。
国会議員が3人子どもを産もうと言う話をして、女性蔑視だ!女性の自由意思だ!という反論に遭い、委縮してしまって何もしてこなかった結果が今です。
絶滅危惧種の動物がいたら保護活動をしますよね?
日本人が絶滅危惧種になろうとしているのに、見過ごすのか?
もう遅いという学者もいるが、何もしないで絶滅に向かって手をこまねくのか?
将来をもっと豊かにしていくために政治をやっているのではないのか?
日本人や足立区民がいなくなっていいと思って政治をしているのか?
足立区のトップが掲げる目標が、なぜ1.4という低い数字なのか?
難しくても努力していかなくてはならない問題なのではないか?」
要約すると、このような思いを話されていました。
(3~4回しか聞いていないので細かい部分が違うかもしれませんが、大体こんな感じです。)
この方がどれだけ有言実行の方かまでは存じ上げませんが、少なくとも未来の社会と日本人存続のために危機感をもって一石を投じている様子が窺えます。
そしてこれもそもそもですが、まず白石区議は「個人の生き方に干渉するつもりはない」と前置きをしたうえで、
「性の多様性を認める話もいいが、少子高齢化による日本人絶滅の危機や、日本人が生き残っていくために出産が必要なことも大事な話であり、それをどうやって教育の場でとりあげていくかの是非を話し合いましょう」という話をしています。
「ただ、日本人が絶滅の危機を迎えているから防ぎたくないですか?
性の多様性もある中での少子化問題について目標高く取り組んでいきましょう。
また、なぜ子どもを産むことが大事なのかについて、性の多様性も絡めてしっかり教育の場を作っていきましょう」って話をしているだけで、 別に子どもを産まない女性を責めているわけでも、LGBTを責めているわけでもなさそうです。
というかむしろLGBTを受け入れつつ、どうやって人口減少を食い止めるかの話であって、こういった見当違いな反論が来てしまうことに対して、しっかり啓蒙していきましょうと言ってるように聞こえます。
強めな言葉になってしまったのはもしかすると、危機感から来る焦りによるものではないでしょうか?
(「皆に伝わるように分かりやすく話していきたい」とも言っていたので、それが裏目に出た感もありますが…)
LGBTの方たちってまだマイナーな存在で、偏見などを受けることから、自分達の居場所を守ろうと闘っている真っ最中ですよね。
人類の歴史で言う黒人だったり、女性だったりが、人権を主張し獲得してきたものと同じかなと思います。
そのために啓蒙活動が活発的であり、存在が目立つ一方、いわゆる普通とされている男女のカップルは日常となっているので特に目立つことはないでしょう。
LGBTで埋め尽くされて子孫が残らなくなることなんてないと思いつつ、それでも勢いの差が気になってしまった結果、危機感から生まれた言葉なんじゃないかと想像してみたり。
データで見れば日本の人口の7.6%がLGBTの方のようなので、そこまでの影響はないと思いますけどね。
そんな話でしたので、彼を叩くよりも結婚して子どもを産みやすい環境も、LGBTが自然に暮らせる環境も、両方大事ということで「そのために何ができるかを考えていこう」という論点に進むのが1番建設的じゃないでしょうか。
そしたら先程自分の意見として述べた「男女のカップル成立や結婚、出産がしやすい環境づくり」だけではなく、例えば「LGBTカップル家庭の養子縁組支援の充実」や「不妊治療を受けやすい制度の追求」「中絶を選ばずに済む仕組みづくり」とか「責任を追及しすぎず、負い目を感じさせない社会」など別の意見が出てきて、具体的な話に進められますよね。
まぁ私はこの問題に真剣に向き合ったことがないのでこのくらいしか考えられないし、すでに不妊治療助成とか産休など子育ての支援策はあるかもしれませんが、少なくともまだまだやれることはあるはずです。
産みたくない方に強制するって話や日本人滅亡してもいいって方だったら反論していいと思いますが、強制的な話はされていないですし、滅亡してほしくない方は多いのではないでしょうか。
どうせなら子どもを産みたい方が産みやすくなるにはどうしたらいいかな?結婚したい人が結婚しやすくなるにはどうしたらいいかな?って話が活発化した方がいいし、そんな討論からLGBTだけど子どもは欲しいわって方にとってより良い制度が生まれるかもしれません。
産みたくない人は、私には関係ないわで聞き流せばいいですね。
「子どもを産んでよかった」って発言も、なんでそこまで叩かれるんだろう?と思ってしまいます。
子どもを産むのはたしかに女性ですが、男性がいないと子どもは産まれませんので、2人の共同だと思うんです。
逆にここで「産んだのは女性だ!」って声をあげる人は、育児に男性が参加しなくても何も言えなくなっちゃいません?「産んだお前の責任だろ」って返されたら終わりです。
むしろ自分ごととして自然に「子どもを産んでよかった」と言える人であって、「夫婦で子どもを産む」って感覚のほうが協力しあえていていいなぁと思っちゃいました。
人は自分が見たいように見る
改めて記事を読んでみると、なんか必要以上に叩かれている気がします。
言葉の表面だけで話を進めていて、すごくヘイトスピーチ警察な感じがするんですよね。
ただ「性の多様性と日本の人口減少を教育で取り上げよう」って話をしているだけで、むしろLGBTの理解に協力的とすら感じるのですが、「LGBT」や「子どもを産む」という言葉に条件反射して切り取られているんですよね。
「女性は子供を産む機械」発言をした柳澤厚生労働相という方はいましたが、白石区議はそんな言葉を発していません。
「絶対3人子どもを産む」って話をされていたのも他の国会議員の方の過去のお話ですよね。
事実に基づかない憶測や偏見で話されているのはどちらだろうと思ってしまいます。
そうやって切り取られた言葉を見て、さらに周りがざわついて。
その中でいったいどれだけの人が区議の発言全文を見て物を言っているのでしょうか。
自主警察で取り締まるんじゃなくて、一人ひとりが自分の意思を示して、自分がどういう未来にしたくて、どういう行動をとっていくかに尽きると思うんですよね。
足立区民以外がなぜ騒ぐ?
明らかに足立区民以外の人達が騒いでいますよね。
自分に何の影響が及ぼされるのでしょうか…。
足立区議として存在している以上、足立区民の方達に選ばれた方なわけで、もし不満があるなら別の人に投票しましょうって話です。
選挙って本当に大事ですね。
論点がずれていく不毛さ
たとえば「リンゴが赤い」という話題が出たとします。
そうすると、いろんな反応が次々と現れていきます。
「青や黄色のリンゴもあるぞ!決めつけるな!」
「イチゴだって赤いぞ!自分だけが赤いと思うな!」
「ナシのことを忘れないでください…」
というよくわからない反応です。
「赤いリンゴしかない」
「赤い果物はリンゴしかない」
「果物はリンゴしかない」
と言われたなら正しい反論だと思いますが、そんなこと言っていません。
結構こういった論点のズレの発生ってよく見かけるんですよね。
相手の言葉全体を見たり、自分の読解力に不足はないか確認するクセって大事だなぁと思いました。
10月10日追記
上記の件についての取材の受け答えを見ました。
私の理解はおおむね合っていたようです。
そして抗議の電話以上に、賛同の電話が多いというニュースは流れない、マスコミの切り取り方は怖いなって思いました。
言葉の暴力だと批判する言葉の方が暴力的ですね。
LGBTが出生率に与える可能性は少ないことはやはり認識されていました。
そりゃそうですよね。過小に推測してしまい、失礼いたしました。
足立区がLGBTの教育について割と積極的にやってきていることは認めるが、そちらの方を強調するあまり、普通に子どもを産んで育てることの大切さについての教育が足らないのではないかと。そのことを教育委員会に聞くために言った
その上で、問題とされている箇所については「誤解されている部分」があると主張。「LGBTが少子化の直接の原因になるとは一言も言っていない。ごく少数なので、全体の出生率に与える影響はほとんどない」と説明する。
もし区議が注目を集めるために、あえて狙ってあの言い方をしたのだとしたら、計算と度胸がすごいですね。
目を向けさせるという点で言えば効果は抜群ですし、ちゃんと発言を聞けば意図は伝わります。
でもやはり「普通」という言葉は使わないに越したことはないですね。
どんな指向を持った方も生きやすく、そして結婚や出産を望む方の願いが叶いやすい世の中になっていくことを願います。